朝乃山、笑顔なき初V 影落とす判定と取組編成

◇豪栄道に快勝しても…

 大相撲夏場所14日目(25日、東京・両国国技館)、トランプ米大統領を迎える千秋楽を待たずに、西前頭8枚目朝乃山(25)=富山県出身、高砂部屋=の初優勝が決まった。三役経験のない力士の平幕優勝は58年ぶり。快挙には違いないが、前日の判定がまだ尾を引き、笑顔もうれし涙もなかった。朝乃山に責任はないが、取組編成のまずさも微妙な影を落とす優勝だった。

 

 この日の一番は快勝だった。大関豪栄道に立ってすぐ得意の左上手を許す。勝負あったかと見えた。「いつもなら右(を差した)だけで出て行ってすくい投げとかしちゃうけど、きょうは何か分からないけどじっとしておこうと思った」と朝乃山。大きなことを成し遂げる時の、「ゾーン」に入った状態だったのかもしれない。

 二の矢を打てない豪栄道を、左から絞り、体を寄せて前に出る。左上手に手が掛かり「(まわしが)深かったけどがむしゃらに出ようと」、腰の位置をしっかり決めて東土俵へ寄り切った。

 胸を張れる白星。勝ち残りで見上げた土俵で栃ノ心が鶴竜を破り、優勝が転がり込んだ。普段のキャラクターからすれば、笑いが止まらないかと思われたのに、支度部屋へ戻っても神妙だった。

 取り口を振り返る言葉には納得感がこもっていたが、口元は緩まない。実感が湧かないだけではなかった。「きのう(の一番が)納得いっていないんで…分かんないです」。この朝も、もやもやしたものが残っていると明かし、土俵上では忘れられたというが、降りて再び心に影が広がったようだ。

 救いは栃ノ心の一言。NHKのインタビュールームを出る時、栃ノ心から「おめでとう」と言われたという。「うれしかった。僕は『すいません』と謝りました。一生残るんじゃないですか」。だが、栃ノ心が鶴竜を破って大関復帰を決めた一番は、観客の失望を買う立ち合いの変化。それで自分の優勝も決まったのだから、朝乃山にとってはこれまた複雑な心境なのだろう。

 言うまでもなく前日の判定は、朝乃山には全く非がない。攻めていたのは朝乃山。行司軍配は栃ノ心の引き技に上がったが、その前に栃ノ心のかかとが俵を踏み越していたとして、差し違えで朝乃山の白星になった。

つづく

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190525-00000099-jij-spoより