飛び降りたい人生

小学校の時、校庭のフェンスから飛び降りた。足をくじいた。でも痛くはなかった。それよりも興奮というのか、高揚というのか、自分の細胞が身体中を這いずり回っているような、そんな激しいざわめきが僕を支配した。そんな感情を覚えたことはなかった。先生からはなぜ飛び降りたのとひどく詰問されたが、理由なんてどうでもよかった。


 高校の時、家族と初めて富士急ハイランドに行った。そこでFUJIYAMAというジェットコースターに乗って、僕の中のスイッチが入った。そこから絶叫マシンの虜になって、ありとあらゆる遊園地を巡った。カリフォルニア旅行に行った時も、友人たちがディズニーランドへいく中、僕だけ「シックスフラッグズ」という絶叫マシン専門パークに一人でいくほどだった。


 スカイダイビングに挑戦したこともある。ラスベガスで、砂漠の真ん中へと飛び降りた。オンボロの飛行機から雲の中に飛び込んでいくのは、怖いというより爽快だった。


 それでも、どこか物足りなさを感じていた。ジェットコースターは機械で動くし、スカイダイビングはインストラクターが背中についてくれる。そうではなくて、僕は独りで飛び降りたいんだ。たった独りで、虚空にこの身を投げ出したい。校庭のフェンスから飛び降りた時のあの感情を、僕は探し続けていた。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190511-00000010-it_nlab-lifeより